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「迷子の大人たち」

9年ぐらい前に見た映画のタイトル、面白かったのか面白くなかったのか、ともかく妙に心にひっかかって折にふれ思い出す。

さしたるトラブルもなく、子供たちにも恵まれ、傍目には幸せそうに見えたごく普通の夫婦…
何十年も連れ添った夫が亡くなった時、「とうとう最後までなじめなかった」 主人公の女性がそう呟く。
これが普通だと思っていた夫婦のありようを受け入れ、こんなものだと思う日々の暮らしを送っていた主人公の前に
葬式の日、突然見も知らぬ一人の男が訪ねてくる。
その男は、何十年も前、通りすがりに窓の中に見た、幸せそうに笑う若い主人公に一目ぼれして、以来見守り続けてきたと言う。
現実に置き換えるとなんとも不気味な話なのだが、それはさて置き、その男もごく普通に幸せな家庭を持って、子供もどっさり
中むつまじい夫婦関係を全うし、妻に先立たれた今、交際を申し込みに来たのだった。
その無礼な男に怒り戸惑いながらも、その強引さに引っ掻き回され、主人公の自分探しが始まる。

私達はともすると日々の生活に忙殺されて、あるいはその単調さの故に迷子になっていることすら気がつかない。
夫婦間の「なじむ」という微妙なニュアンスを考えるとき、それはすなわち生き方に大きな影響を与えるわけで…
今ここでその具体的で危険な領域に踏み込むつもりはないので、この映画の結論を話せば、その主人公の女性にとって
相手となる男性が「なじめる人かどうか」ということが最も大切なことで、それを確かめるべく一晩いっしょに寝てみる…
という行動に出る。一つのベッドでただ寝るだけ…ぐっすり安眠できるかどうか…

私達はどんな一生を送りたいと思っているんだろう。人生に何を望むだろうか。
勿論人それぞれ、年令に応じて変化もするだろう。
夢や理想を持ち、それを実現できるよう努力し、ある人は成功し、多くはその努力不足、能力不足のため挫折し…
本当か?多くの人は夢や理想そのものをはっきりと描ききっていなかったのでは…
何を望んでいるのか自分でもよく解っていなかったのではないだろうか。
それは具体的だからといって必ずしもはっきりしているわけではなく、漠然としているからといって解ってないともいえない。

「なじむ」ことにこだわる主人公の気持ちを共有してしまった時から、私も自分探しを始めたように思う。
今チョッピリ後悔の念を持ちながらもはっきり言えることは、自分にとって一番大切なものは何なのかをちゃんと見極めて、
それを一番大切にできるように行動すること…清々とした気分のよい生き方を選びたいと言うことだ。

今私が最も望んでいることは、平穏な気持ちで毎日を過ごせること…
清々とした気分のよい生き方をすること…そんな年令になったということかな?